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松の物理学勉強帳

実験で理学修士取得後、16年のブランクを経て再び書を手に取った筆者の物理学学習メモ。素粒子に向かっています。初学者の助けになればいいなと思います。また、ツッコミお待ちしております。

2.1 古典力学の運動法則(3)

お久しぶりになってしまいましたが、前回までで、ヤコビアンが1になる座標変換は正準変換となり、同じ物理を表すということを言いました。ホンマかいなと思うと思いますので、今回はそれを示します。

では、\(q, p\)から何らかの変換を受けた\(Q\)の時間変化を見ていきましょう。\(Q\)は\(q, p\)の関数なので、Qの時間微分は\(q, p\)の全微分となって、

$$\begin{align}\dot{Q} &=\frac{\partial Q}{\partial q}\dot{q} + \frac{\partial Q}{\partial p}\dot{p}\\\ &=\frac{\partial Q}{\partial q}\frac{\partial H}{\partial p} - \frac{\partial Q}{\partial p}\frac{\partial H}{\partial q}\\\ &= \left\{Q,H\right\}_{q, p}~~~~~(A)\end{align}$$

という風に表すことができます。\(Q, P\)が正準変数であれば、\(Q, P\)で表したハミルトニアン\(H'\)を用いたハミルトン方程式

$$\dot{Q} = \frac{\partial H'}{\partial P},~~~~\dot{P} = -\frac{\partial H'}{\partial Q}$$

を満たすわけですから、\(\dot{Q}, \dot{P}\)は、式(2,13)と同じように、

$$\dot{Q} = \left\{Q, H'\right\}_{Q, P}, ~~~\dot{P} = \left\{P, H'\right\}_{Q, P}~~~~(B)$$

を満たすはずです。

上記\((A),(B)\)が矛盾なく成り立つ、すなわち、\(Q, P\)が正準変数であるためには、

$$\left\{Q, H\right\}_{q, p} = \left\{Q, H'\right\}_{Q, P}\\\ \left\{P, H\right\}_{q, p} = \left\{P, H'\right\}_{Q, P}$$

となることが条件となります。そこで、上記の式を、ヤコビアンが絡む感じに変形していきます。

$$(左辺) = \left\{Q, H\right\}_{q, p} = \frac{\partial Q}{\partial q}\frac{\partial H}{\partial p} - \frac{\partial Q}{\partial p}\frac{\partial H}{\partial q}~~~~~~(C)$$

ここで、\(\partial H\)を\(\partial H'\)に変換します。そもそも\(H(q, p)\)と\(H'(Q, P)\)は同じものを座標変換して表しただけのものなので、\(p\)をわずかに増やしたときの\(H\)の増分というのは、全微分の形で表せて、

$${\partial H} = \frac{\partial H'}{\partial Q}{\partial Q} + \frac{\partial H'}{\partial P}{\partial P}$$

となるんです(偏微分の形で書くのは厳密にはどうかという気もするけど)。もともと\(H\)と\(H'\)は同じものなんだから。これが重要です。

そうすると、

$$\frac{\partial H}{\partial p} = \frac{\partial H'}{\partial Q}\frac{\partial Q}{\partial p} + \frac{\partial H'}{\partial P}\frac{\partial P}{\partial p}, \\\ \frac{\partial H}{\partial q} = \frac{\partial H'}{\partial Q}\frac{\partial Q}{\partial q} + \frac{\partial H'}{\partial P}\frac{\partial P}{\partial q}$$

となるのは、割り算なので分かると思います。これらを\((C)\)に代入すると、

$$\begin{align}(左辺) &= \frac{\partial Q}{\partial q}(\frac{\partial H'}{\partial Q}\frac{\partial Q}{\partial p} + \frac{\partial H'}{\partial P}\frac{\partial P}{\partial p}) - \frac{\partial Q}{\partial p}(\frac{\partial H'}{\partial Q}\frac{\partial Q}{\partial q} + \frac{\partial H'}{\partial P}\frac{\partial P}{\partial q})\\\ &= \frac{\partial H'}{\partial P}(\frac{\partial Q}{\partial q}\frac{\partial P}{\partial p} - \frac{\partial Q}{\partial p}\frac{\partial P}{\partial q})~~~~(D)\end{align}$$

ここで、

$$\frac{\partial H'}{\partial P} = \frac{\partial Q}{\partial Q}\frac{\partial H'}{\partial P} - \frac{\partial Q}{\partial P}\frac{\partial H'}{\partial Q} = \left\{Q, H'\right\}_{Q, P}$$

が成り立ちます。なぜなら、\(Q\)と\(P\)は独立なので\(\frac{\partial Q}{\partial P} = 0\)で、\(\frac{\partial Q}{\partial Q} = 1\)は自明だからです。

この式を\(D\)に入れると、

$$(左辺) = \left\{Q, H'\right\}_{Q, P}\left\{Q, P\right\}_{q, p}$$

となります。これが、\(\left\{Q, H'\right\}_{Q, P}\)と等しくないといけなかったわけですから、満たすべき条件は、

$$\left\{Q, P\right\}_{q, p} = 1$$

ということになります。これすなわち、ヤコビアンが1である、ということですよね。

ということで、証明終わりです。一つずつ計算過程を書いていったら結構な量になり、散漫な記事になってしまった気もしますが、大事なのは、ヤコビアンが1である限り、座標変換をしても同じ物理を表すことができるということで、適当な座標変換が、時には計算を楽にしたり、時には新しい発想を生み出したりするのです。その威力を発揮するのはもうちょっと先です。お楽しみに。

ということで、ハミルトン形式の古典力学はいったんここまで。