光格子時計とは 次に原子時計
クオーツ時計から大幅に精度が向上したのが原子時計です。クオーツ時計では水晶の共振信号を用いましたが、原子時計では、原子とマイクロ波の共鳴を使って時間を計ります。国際的に、1秒という単位の基準になっているのは、セシウム133です。
簡単に原理を説明しますと、セシウムにマイクロ波を照射しますと、ある特定の周波数(セシウム133なら91億9263万1770Hz)で、原子からの放射強度が極大になります(共鳴)。この共鳴があれば周波数は91億9263万1770Hzで合ってることになりますし、なければ周波数がずれているということで、マイクロ波に対して周波数の補正を行います。こうして得られた91億9263万1770Hz(セシウム133の場合)のマイクロ波を基準として時を刻むのが原子時計です。この91億9263万1770Hzという数字も、セシウムの超微細構造云々という話が絡むのですが、今回は省略します。
周波数3万2768Hzのクオーツ時計と比べますと、精度が桁違いに上がっていることがお分かりいただけるかと思います。ノイズかなにかの原因で周波数が100Hzずれたとしたら、クオーツなら100/32768:約0.3%の誤差になるのに対し、原子時計なら100/9192631770:10^-6%の誤差です(乱暴な議論ですが、まあ単純な例ということで)
光格子時計とは? まずは普通の時計から
昨日の記事で、光格子時計の話をしたので、その動作原理や特徴を探るべく、まずはクオーツ時計からその動作を見ていきます。時計というのは、ある一定時間経ったら決まっただけ針を動かすというもの。その一定時間をどうやって決めるかで、時計の種類が決まります。
で、クオーツ時計ですが、通常水晶振動子を使います。水晶振動子というのは、簡単に言いますと、電圧をかけると特定周波数の成分に共振して、その周波数の交流電圧を出力するもの。この周波数を知っていれば、電圧が何回振動したら1秒になるかが分かるわけですから、これを使って、1秒ごとに秒針が動くように作ればいいわけです。この周波数は、使用する物質やカットの方法によって変わってきますが、通常32,768Hzのものがよく使われます。
非常に簡単にクオーツ時計の原理を勉強したわけですが、ここで問題になるのが周波数の精度です。水晶が発振する周波数が正確に32,768Hzなら問題ないのですが、水晶のおかれた条件や、電気的ノイズなどで周波数がずれてしまっていたりするわけです。そうするともちろん時計の狂いの原因になる。したがって、できるだけ高精度の周波数基準がほしいわけです。水晶も高精度ではあるのですが、やはり限界があるということで、さらなる高精度化のために編み出されたのが原子時計です。
それぞれの力の性質 ~読書メモ
第五の力とダークマター
先日、自然界の第五の力発見?というニュースが飛び込んできました。
これまで自然界の力は四種類であるという前提でさんざん勉強を重ねてきましたから(勉強してないだろ!とお叱りを受けそうですが)、こんな私でさえもインパクト受けました。この件で取りざたされているのがダークマターやダークエネルギー。ここでこれらが取りざたされるというのは、これらがその「第五の力」しか感じないために、「第五の力」の研究が進むとその正体が見えてくる期待があるから、ということでしょうか。順番は違いますが、弱い相互作用を見ていたらニュートリノの存在が予言された、という話と似てる気がします。そういえば学生時代、学科のサッカーチーム「FCニュートリノ」に所属していました。イタリアっぽい物理用語ですよね。
2.1 古典力学の運動法則(3)
お久しぶりになってしまいましたが、前回までで、ヤコビアンが1になる座標変換は正準変換となり、同じ物理を表すということを言いました。ホンマかいなと思うと思いますので、今回はそれを示します。
では、\(q, p\)から何らかの変換を受けた\(Q\)の時間変化を見ていきましょう。\(Q\)は\(q, p\)の関数なので、Qの時間微分は\(q, p\)の全微分となって、
$$\begin{align}\dot{Q} &=\frac{\partial Q}{\partial q}\dot{q} + \frac{\partial Q}{\partial p}\dot{p}\\\ &=\frac{\partial Q}{\partial q}\frac{\partial H}{\partial p} - \frac{\partial Q}{\partial p}\frac{\partial H}{\partial q}\\\ &= \left\{Q,H\right\}_{q, p}~~~~~(A)\end{align}$$
という風に表すことができます。\(Q, P\)が正準変数であれば、\(Q, P\)で表したハミルトニアン\(H'\)を用いたハミルトン方程式
$$\dot{Q} = \frac{\partial H'}{\partial P},~~~~\dot{P} = -\frac{\partial H'}{\partial Q}$$
を満たすわけですから、\(\dot{Q}, \dot{P}\)は、式(2,13)と同じように、
$$\dot{Q} = \left\{Q, H'\right\}_{Q, P}, ~~~\dot{P} = \left\{P, H'\right\}_{Q, P}~~~~(B)$$
を満たすはずです。
上記\((A),(B)\)が矛盾なく成り立つ、すなわち、\(Q, P\)が正準変数であるためには、
$$\left\{Q, H\right\}_{q, p} = \left\{Q, H'\right\}_{Q, P}\\\ \left\{P, H\right\}_{q, p} = \left\{P, H'\right\}_{Q, P}$$
となることが条件となります。そこで、上記の式を、ヤコビアンが絡む感じに変形していきます。
$$(左辺) = \left\{Q, H\right\}_{q, p} = \frac{\partial Q}{\partial q}\frac{\partial H}{\partial p} - \frac{\partial Q}{\partial p}\frac{\partial H}{\partial q}~~~~~~(C)$$
ここで、\(\partial H\)を\(\partial H'\)に変換します。そもそも\(H(q, p)\)と\(H'(Q, P)\)は同じものを座標変換して表しただけのものなので、\(p\)をわずかに増やしたときの\(H\)の増分というのは、全微分の形で表せて、
$${\partial H} = \frac{\partial H'}{\partial Q}{\partial Q} + \frac{\partial H'}{\partial P}{\partial P}$$
となるんです(偏微分の形で書くのは厳密にはどうかという気もするけど)。もともと\(H\)と\(H'\)は同じものなんだから。これが重要です。
そうすると、
$$\frac{\partial H}{\partial p} = \frac{\partial H'}{\partial Q}\frac{\partial Q}{\partial p} + \frac{\partial H'}{\partial P}\frac{\partial P}{\partial p}, \\\ \frac{\partial H}{\partial q} = \frac{\partial H'}{\partial Q}\frac{\partial Q}{\partial q} + \frac{\partial H'}{\partial P}\frac{\partial P}{\partial q}$$
となるのは、割り算なので分かると思います。これらを\((C)\)に代入すると、
$$\begin{align}(左辺) &= \frac{\partial Q}{\partial q}(\frac{\partial H'}{\partial Q}\frac{\partial Q}{\partial p} + \frac{\partial H'}{\partial P}\frac{\partial P}{\partial p}) - \frac{\partial Q}{\partial p}(\frac{\partial H'}{\partial Q}\frac{\partial Q}{\partial q} + \frac{\partial H'}{\partial P}\frac{\partial P}{\partial q})\\\ &= \frac{\partial H'}{\partial P}(\frac{\partial Q}{\partial q}\frac{\partial P}{\partial p} - \frac{\partial Q}{\partial p}\frac{\partial P}{\partial q})~~~~(D)\end{align}$$
ここで、
$$\frac{\partial H'}{\partial P} = \frac{\partial Q}{\partial Q}\frac{\partial H'}{\partial P} - \frac{\partial Q}{\partial P}\frac{\partial H'}{\partial Q} = \left\{Q, H'\right\}_{Q, P}$$
が成り立ちます。なぜなら、\(Q\)と\(P\)は独立なので\(\frac{\partial Q}{\partial P} = 0\)で、\(\frac{\partial Q}{\partial Q} = 1\)は自明だからです。
この式を\(D\)に入れると、
$$(左辺) = \left\{Q, H'\right\}_{Q, P}\left\{Q, P\right\}_{q, p}$$
となります。これが、\(\left\{Q, H'\right\}_{Q, P}\)と等しくないといけなかったわけですから、満たすべき条件は、
$$\left\{Q, P\right\}_{q, p} = 1$$
ということになります。これすなわち、ヤコビアンが1である、ということですよね。
ということで、証明終わりです。一つずつ計算過程を書いていったら結構な量になり、散漫な記事になってしまった気もしますが、大事なのは、ヤコビアンが1である限り、座標変換をしても同じ物理を表すことができるということで、適当な座標変換が、時には計算を楽にしたり、時には新しい発想を生み出したりするのです。その威力を発揮するのはもうちょっと先です。お楽しみに。
ということで、ハミルトン形式の古典力学はいったんここまで。